ゴミ本なんてない

色々な本の読み方の提案をしているブログです。

京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」の聖地巡礼をしてみた

初めて京極夏彦の作品を読んだのは中学生の頃、家族旅行で行ったラスベガスにて。『姑獲鳥の夏』があまりにも面白過ぎて、観光そっちのけでホテルに籠もり読み耽った当時の興奮を未だに覚えている。以降、氏の「百鬼夜行シリーズ」を読み倒し、夏が四季の中で一番好きというのもあり、毎年の如く『姑獲鳥の夏』を読み返している自分。 今まではずっと海外住まいで土地勘があまりない中で読んでいたのだけど、日本に引っ越して数年が経った今、折角なので物語の舞台各所を訪れることしました。ついでに各長編も作中の季節に合わせて再読。未訪問の場所の良さを思いがけず知ることができた、楽しい一年でもありました。

なお、重大なネタバレはしていないつもりですが、シリーズを既読の方が読まれる前提で記事を書いています。そのため、未読の方はご注意ください!

姑獲鳥の夏」京極夏彦

早速大大大好きな作品から。物語は昭和27年(1952年)の梅雨も明けようという7月のある日、奇妙な噂を聞きつけた関口巽が古書肆京極堂を訪れるところから始まる。京極堂も、そこに至る眩暈坂も、それらしき場所が見つからないので、今回は噂の的となっている「久遠寺医院」があるとされる雑司ヶ谷へ。中央線中野駅から「早稲田行き」のバスに乗り、早稲田で都電に乗り換えて向かった関口の足跡を辿るように、都電荒川線に乗車。

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都電は鬼子母神に到着した。

鬼子母神前駅で下車した後は、参道のケヤキ並木に見惚れつつ、鬼子母神へ歩を進める。

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待ち合わせ場所ーー鬼子母神の境内には、既に中禅寺敦子が頼りない探偵代理を待っていたのである。

平日の昼間、仕事をサボって訪れたためか人影はまばら。時折、安産と子育ての神とされる鬼子母神へ祈りを捧げる若い夫婦や、近所の人が散歩している姿が見えるだけだった。

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作中でも説明があった通り、鬼子母神は元々インドで「訶梨帝母(かりていも)」と呼ばれ、鬼神との間に数百人もの子を産み愛したものの、他の人間の子供を取って喰う残忍な面も併せ持つ女性だったとのこと。見かねた釈迦は、訶梨帝母の末子を隠し、嘆き悲しむ彼女に「千人のうちの一子を失うもかくの如し。いわんや人の一子を食らうとき、その父母の嘆きやいかん」と諭す。自らの過ちを認め三宝に帰依した訶梨帝母は仏法の守護神、そして安産と子育ての神として人々から崇め奉られるようになったとのこと。そのため、善神となった彼女の姿を表すかのように、鬼子母神堂の看板の「鬼」の字からも「ツノ」が取れている。*1

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高高十何年の人生であるが、取り敢へず今日が人生最良の日といへよう。此の文を書き上げてから指定の場所、子授け銀杏に向かふことにする。

境内の入り口近くには、樹齢七百年とも言われる大銀杏の木が。抱きつくと子宝に恵まれるという民間信仰から「子授け銀杏」とも呼ばれているそう。*2 藤牧が逢引をしていた場所だけれども、昼ですら鬱蒼として暗いのに、夜に一人で来るのはなかなか勇気がいるのでは、と勝手に思ったり。

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住まいは法明寺の東側だーーと久遠寺涼子はいっていた。

最後は折角なので法明寺にも。ここから東に進み、線路を越えた先にある雑司ヶ谷霊園よりも手前の森の中に、「久遠寺医院」はあるらしい。歩いた感じ、住宅街ばかりで森のようなものは見つからなかったが、想像で補うのも楽しい。事前取材はしていなかったものの、その後同地を訪れた京極氏が本当に病院があるのをみつけ、「まずい」と担当に電話したエピソードを思い出したり。*3 今にも雨が降り出しそうな雰囲気抜群の中での雑司ヶ谷探訪だった。

百鬼夜行 陰」京極夏彦

ここで「百鬼夜行シリーズ」に登場する人々のサイドストーリーが収録された短編集、『百鬼夜行 陰』と『百鬼夜行 陽』も読んでいくことに。『姑獲鳥の夏』を読んだ後であれば、本編の冒頭へと繋がる、関口と妻・雪絵が登場する「川赤子」と、久遠寺涼子と内藤赳夫の「文車妖妃」が読める(どちらも『百鬼夜行 陰』収録)。

魍魎の匣」京極夏彦

次はシリーズの中でも特に人気が高いこの作品。『姑獲鳥の夏』のすぐ後、昭和27年8月15日に中央線武蔵小金井駅で発生した女子中学生の人身事故から本作は始まる。

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プラットフォームはがらんとしていて人影はなかった。加菜子はこつこつと跫を立ててホームの先頭に進んだ。そして橙色の電燈の下で立ち停まった。

ということで、しっかりと物語と同じ8月の金曜日の夜に、武蔵小金井駅まで行ってきました。コロナ禍だからか、それとも元から金曜夜に西行きの電車に乗る人は少ないからなのか、ガラガラ。何もないホームの写真を撮るのが凄く恥ずかしかったのでラッキーだった。

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足が二本、相模湖に浮いてたらしいんですよ。地元の人が見つけたんです。

そして翌日は、物語の8月29日に国道二十号線の大垂水峠で見つかった右腕に続き、8月30日に鉄の箱に入った両脚が釣り上げられた相模湖へ。元々柚木加菜子と楠本頼子が見に行こうとしていた場所でもある。船のドックでソファに身を沈め、ビールを飲みながら『魍魎の匣』を読める、なんて素敵な場所なんだ!!!遊覧船に乗った子供に手を振り返したりしながら、充実した時間を過ごした。

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この桟橋の突端から覗いたんですよ。釣り船を出そうとしてたらしい。そしたら何だか箱みたいなものが沈んでる。宝物の箱だと思ったらしいんですよ。馬鹿馬鹿しい。止せばいいのに竿か何かの柄で突いたんですな

あまりにも長閑で、地元の釣り人が人体の一部を釣り上げるような重大事件なぞ一向に起こりそうもない場所だったが、釣り人自体は多く、その点だけは少し説得力があった。こんな感じの桟橋の近くで見つけたのかも。

百鬼夜行 陽」京極夏彦

魍魎の匣』を読んだ後は、寺田兵衛が出てくる「青女房」が楽しめる(『百鬼夜行 陽』収録)。

ルー=ガルー 忌避すべき狼」京極夏彦

「百鬼夜行シリーズ」を作中の季節に合わせて読むと決めたものの、そうとなると作品と作品の間、数ヶ月は待たなければならないこともままあり、早く次が読みたい!と逸る気持ちがなかなか抑え切れず。そこで、「百鬼夜行シリーズ」と同じ世界線で展開される他シリーズも読むことに。まずは、未来を舞台にしたSF作品の「ルー=ガルーシリーズ」。こちらの一冊は、『魍魎の匣』に登場する重要人物とかかわり、『百鬼夜行 陰』収録の短編「鬼一口」にも登場する、鈴木敬太郎という男がキーパーソンとなるので、未読の方は是非この2作を読破してから読んでみて欲しい。また、「鬼一口」に登場する「薫紫亭」は「百鬼夜行シリーズ」の後続作品『塗仏の宴』にも出るので、覚えておくと良い。

狂骨の夢」京極夏彦

シリーズ3作目の舞台は逗子。意識が混濁した人物の独白の後、寒風吹きすさぶ昭和27年11月1日に釣り堀の主、伊佐間一成が海に向かって花を手向ける不思議な女性と出会うシーンから物語は蠕動し始める。事前に調べた所、今回赴く場所はかなり有名な心霊スポットばかりと知り、ビビりな自分は一人では行けず知り合いに付き合ってもらうことに。

まずは逗子駅で降り、徒歩で名越に切り通しに向かう。途中で道を誤り、初っ端から超心霊スポットの小坪トンネルに入りそうになってしまい、この時点で既に心が折れかける。元来た道を戻り、スタート地点の法性寺の本堂から急な階段を上り、奥の院へと向かう。そこから少し進むと眼前に広がる墓地。ここまでお膳立てしてくれなくてもいいです…と心の中で泣きながら、墓地脇の小道から更に奥へ。今度は不気味な洋館(他人の家を不気味とは失礼にも程があるが)の脇を通り、まんだら堂やぐら群(後述)を過ぎた所で、ようやく名越の切り通しに到着。

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どこに行こうか少し迷ったが結局は逗子にした。[…]そして物好きなことに、伊佐間は鎌倉から名越の切り通しを越えて逗子まで歩いたのだ。

早く離れたいという気持ちからか写真がブレている…笑 本作を読むまで切り通しが何なのか知らなかったが、要するに小山や丘を切り崩し作った要路で、戦時中は防衛的役目も果たしたそう。鎌倉にはそのような切り通しがいくつかあり、鎌倉七口と呼ばれ、名越の切り通しはその内の一つ。*4 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放送前だったので、ここも人気は少なかった。

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女の家に行くのにも、その切り通しを通った。勿論名もない切り通しである。[…]道は途中で二股に分かれた。

名越の切り通しを越えてすぐ振り向くと、作中の描写と同じように、道が二手に分かれているように見えて少しテンションが上がった。

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何とも無為な日日だった。僕はぼうっとね、名越の切り通しを歩いていた。そうしたら曼荼羅堂の方から男が降りて来た
曼荼羅堂というのは名越えの切り通しの途中にある史跡である。史跡という呼び方であっているのかどうか降旗には善く解らないが、切り通しの壁を刳り貫いて五輪塔などを安置した、要は昔の墓場である。現在はどこかの宗派か、寺が管理しているはずだ。降旗も放浪中に一度行ったことがある。紫陽花が咲き乱れ、一種彼岸の様相を呈していた。美しいところだ。

ここで先程言及したまんだら堂やぐら群の話も。牧師の白丘が出会った行き倒れの男が出てきた場所。ただでさえ雰囲気満点なのに、着いた瞬間、それまで晴れていた青空も一気に曇り周囲が暗くなりかなり怖かった…。そして一息入れた瞬間、異様に焦げ臭い香りが鼻を衝く。化学繊維が燃えた時の匂いと…線香?周りには受付の方しかいないし、と不思議に思いながらきょろきょろと辺りを見回した所、真下に火葬場があり、ゴウンゴウンと音を出しながら稼働していた…。今さっき胸一杯に吸った空気って…と同行者と目を合わせながらしばし無言になった。多分一生忘れられない体験と匂いだったと思う。「死」に縁がある周囲一帯、まさに京極夏彦作品にピッタリなロケーションだった。

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第一報は九月二十三日の朝刊に載っていた。小さな埋め草扱いの記事である。何でも逗子湾に金色に光る髑髏がぷかぷかと浮いていたーーと云うのである。

気を取り直して旅の最後は逗子湾へ。親子連れやサーファーで賑わう海はだいぶ作中のイメージと違ったけれども、確かにこんな所で髑髏が浮かんでいるのが見つかったら大騒ぎになるだろうな、と感慨に耽りながら逗子の地を後にしました。

ちなみに『狂骨の夢』読了後は宇田川崇が主役の「青鷺火」が読めます(『百鬼夜行 陽』収録)。

鉄鼠の檻」京極夏彦

4作目の舞台は箱根、前作から年が明けた昭和28年(1953年)2月。古物商の今川雅澄が箱根山中の旅館「仙石楼」で、『姑獲鳥の夏』にも登場した久遠寺嘉親と出会う。そんな訳で、名前も似ているため関係があるのかと思いきや全く関係がなかった「仙郷楼」に宿泊。原作の「仙石楼」は実在する「仙郷楼」のように仙石原にはなく、「宿の創立者が仙石原の出身だった」ためにそう名付けられたそう。まぁそれでも露天風呂客室でゆっくりできたし、料理も美味しかったし、原作の大広間から見た庭の景色のように雪も(少し)積もっていたし、原作の雰囲気が感じられて良かったとしよう。

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僧は慥かに、そこに居た。縁側から巨木までは四間程離れている。その間には何もない。僧はその、丁度中間程に居た。幻なのではない。実像なのだ。

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冬場の山は気が引けるので訪問は断念。代わりにといってはなんだけれども、本作によく登場する地名を簡単にまとめたマップを作成しました。箱根の土地勘が全くなく、読書中は何度もGoogle Mapで確認しなければいけなかったので、これ一つあればかなり楽になりそう。ちなみに主な場所は下記の通り:

  • 「仙石楼」:「大平台で降りて」「それから歩いて二時間とか三時間」「箱根の宿場からは離れているし、旧街道からも外れている。箱根七湯からも、他のどの集落からも遠い」
  • 「明慧寺」:「大平台の方から」「二時間以上」「明慧寺から仙石楼までは約一時間強」「奥湯本[…](は)反対河岸」「奥湯本側からの方が直線距離では近い」
  • 「富士見屋」と「蔵」:(湯本駅から)「宿(富士見屋)までは歩いて二十三分。現場(蔵)までは約一時間三十分」。(富士見屋から蔵まで歩く道中で)「このままこっちへ行くと旧東海道で、元箱根方面に出るんだ。ところが、ここをこっちへ登る」

登場人物が浅間山を登ってるのか降りているのか、湯坂路に対してどこに位置するのかを意識して読むと分かりやすいかもしれない。

鉄鼠の檻』を読み終えれば、地域の消防団に属する堀越牧蔵と棚橋祐介のずれた会話が心地悪い「煙々羅」と、明慧寺の貫首、円覚丹の生い立ちを描いた「襟立衣」が読める(どちらも『百鬼夜行 陰』収録)。

絡新婦の理」京極夏彦

そしてあっという間に春になり、シリーズ5作目に突入。冒頭、桜吹雪の中で中禅寺秋彦が一人の女性と対峙するシーンが印象的な『絡新婦の理』。舞台は房総半島の勝浦市ということで、春どころか初夏の陽気を思わせる週末に、都心から外房線に乗り目的地へと向かった。

鵜原駅を降りると目の前に観光案内所があったので、そこで親切なおじさんから周辺の地図を貰う。まずは大通りを道なりに進み、住宅街を抜け鵜原海水浴場へ。真っ先に目に飛び込むは浜に立つ白い鳥居。近くの八坂神社のものらしい。

場所は房総、興津町鵜原、季節は春弥生。風まだ寒い漁港の早春である。
駅に降り立つと仄かに磯の香りがした。海が近い。

町を抜け、漁師小屋の立ち並ぶ浜の方へ向かう。[…]仁吉さんの家と云うのはこの近くだ。

近辺にそこまで多くの漁師小屋は見つけられない。仁吉の家はもしかしたら別ルートから行ける勝場港の方だったのかもしれないが、取り敢えずそのまま海岸沿いを進み鵜原理想郷を目指す。途中、右に視線を移すと芳江が住んでいた茂浦の方角にある、的石岬が見えた。

ほら、浜辺ずっと回り込んだ向こうの、的石岬ン方、茂浦つうが、そこにね、昔芳江って女が独りで住んでた

しばらく歩くと理想郷の麓に着く。隧道を抜け、ちょっとした坂を登り終えると景色が開け、黄昏の丘に出る。テーブルとベンチがあり、眺望が良い。生憎この日は強風で座れたものではなかったので、そのまま「蜘蛛の巣館」があるとされる明神岬へ向かうが、その前に、岬自体を一望する。奥にある小高い山がそれ。当たり前だが現実世界では館らしき建造物はないので、想像で補う。

口の悪い奴は蜘蛛の巣館と呼ぶがね。蜘蛛はこう、尻から糸を吐き出すでしょう。紡織機で儲けて建てたからそう云うんだろうね。あの、明神岬の突端の、断崖のとこに建ってる洋館ですわ。

残念なことに明神岬の突端にはアクセスできず、山道の行き止まりには洋館の代わりに大杉神社へと続く階段があった。鯨の頭骨が祀られているらしい。ボロボロの鳥居に蜘蛛の巣が張られていて、思わず一枚写真を撮ってしまった。

八方に張り巡らされた蜘蛛の巣の、その中心に陣取っていたのは実はあなただった。

そういえば桜は全然咲いていないかったなぁ、と帰る道すがらぼんやりと考えていたら、いつの間にか道を誤っていたようで迷ってしまう。仕方がないのでそのまま見慣れぬ道を歩き続けると、桜の樹々が!往路にはなかったのでめちゃくちゃ嬉しい。

一面の桜である。満開の桜の只中である。春の海原を渡る綿津見の猛き息吹が断崖を駆け上り、儚き現世の栄華を一瞬にして薙散らす。空も海も大地も渾然一体となって、ただただ世界を桜色の一色に染め上げんとしているかのようである。

時期が少し遅かったため葉桜になりかけていたが、幻想的な空間にしばし見惚れた。そして行きとは違い異様に険しい山道を進み、ようやく小さな弁天堂の裏手に出て、駅まで戻る帰途につけた。

最後に、鵜原駅から一駅の興津駅へも足を運ぶ。凄惨な事件の舞台となった「聖ベルナール女学院」があるとされる山側には、呉美由紀が嘆く通り目立ったものは特になかった。

この学校ーー聖ベルナール女学院は大正期の創立で、一応名門と云われている。なぜ一応がつくかと云うと、それは立地条件が悪過ぎるからで、それ故知名度も低いからである。房総半島の端っこの、人里離れた辺境にぽつねんと建っているのでは、幾ら名門と粋がったところで限界があると云うものである。

そしてタイミングよく京都に行く予定があったので、ついでと言ってはなんだが「百鬼夜行シリーズ」の複数の作品に登場する羽田家(『絡新婦の理』では織作伊兵衛)の本流、秦氏ゆかりの地である太秦に赴くことに。歴史や宗教に疎く、映画村のイメージしかなかったので、まさかこんなに寺社仏閣を楽しめるとは思わなかった。

まずは京都最古の寺院、広隆寺へ。

羽田氏の本流である秦氏と云うのは、そもそも大陸からの渡来人です。その先祖は秦の始皇帝とも、イスラエルの王ダビデともーー云う
太秦には国宝第一号弥勒半跏思惟像で有名な広隆寺があるが、その広隆寺を創建したのが秦氏の秦河勝だ

霊宝殿にある仏像、特に千手観音像が良かった。京都三大奇祭の一つの「牛祭」もいつか見てみたい。

次は広隆寺から程近い、蚕を祀った蚕養神社、別名「蚕ノ社」へ。こちらも秦氏ゆかりの地とされ、氏が招来した養蚕、機織、染色の技術に因むとされる。*5 本作に記述されている通り、奥に八角柱の三柱鳥居があって感動。柵で囲われ、周りに水はなく、心なしかどんよりしていて少し薄気味が悪かったけれども…。神社の由緒書には、「全国唯一の鳥居」「中央の組石は本殿ご祭神の神座であり宇宙の中心を表し四方より拝することが出来るよう建立されている」とあった。

広隆寺に隣接して、木島坐天照御魂神社、通称蚕の社と云う神社があります。その境内に、元糺の池と云う池泉があり、その池の中程に『三角鳥居』『三面鳥居』などと呼ばれる、日本でただひとつの八角柱三本柱の鳥居がある
ーー三本鳥居は上から見ると三角形だ。これは、ソロモンの印章を構成する三角である

最後は、同じく徒歩圏内にある大酒神社へ。実はここが一番興味深かったり。蚕養神社の三柱鳥居と全く同じ八角柱の鳥居の前の石柱に、秦氏を指す「太秦明神」だけでなく、「呉織神」「漢織神」と彫ってある。由緒書には祭神は秦始皇帝、弓月王、秦酒公、そして相殿に兄媛命、弟媛命、(呉服女、漢織女)とある。呉美由紀の「呉」の字はこれから取ったのだろうと検討をつけ調べてみると、案の定関係がありそう。日本書紀の応神天皇37年の条や雄略天皇14年の条に記述がある、呉から派遣された高い機織り技術を持った織女の4人である、呉織(くれはとり)、漢織(あやはとり)、兄媛(えひめ)、弟媛(おとひめ)の神霊を祀っているそう。*6 *7 紡織に縁が深い、織作の女系一族の物語の登場人物としてふさわしいネーミングだ。

大酒神社の祭神は先程の秦河勝、または大酒明神。酒は本来『辟』と書いた。大辟とは何か。彼の論では辟を闢の略字であるとします。大闢とはーーダビデの漢訳だ

いずれの寺社仏閣も「蚕を養い、呉服漢織に依って絹綾錦の類を夥しく織出し朝廷に奉」った秦氏族の威光が感じられるものばかり。彼らのような異国からの技能集団が妖怪へと転じていく様はシリーズ次作の『塗仏の宴』で語られるので、良い予習にもなった。

絡新婦の理』を読み終えたタイミングで、色々なサイドストーリーも楽しめる。杉浦隆夫と『魍魎の匣』のヒロインである柚木加菜子の邂逅を描いた「小袖の手」、平野祐吉が最初の殺人に手を染めるまでを追った「目目連」、本編では殆ど台詞がなかった山本女史の独白を捉えた「倩兮女」、死ぬ程怖かった木下圀治の「毛倡妓」(いずれも『百鬼夜行 陰』収録)、多田マキの自己弁護渦巻く「屏風闚」(『百鬼夜行 陽』収録)など。

塗仏の宴」京極夏彦

そしてシリーズ6作目は上下巻に分かれた『塗仏の宴』。舞台は初夏の伊豆半島。「占い師、霊感少年、気功道場、漢方薬局、風水経営指南、自己啓発講習、私設研究団体、新興宗教とーーいずれ怪しい連中」が揃い踏みするだけでなく、過去作のキャラクターが一斉に登場する集大成的作品。その分、物語も長く関連する「聖地」も多い。結局2日がかりで伊豆を周ることになりました。

物語の展開順に行けば、まずは「ぬっぺっぽう」の章で関口が訪れた韮山になるが、それは最後に取っておくとして、次の「うわん」の章で朱美が居を移した沼津の千本松原を紹介。沼津駅からバスで5、6分程の千本浜公園に降り立つと、すぐさま威圧的なまでの松林が眼前に迫る。想像の上を行く密度、広さに高さだった。ここで人が首を縊ろうとしていても、正直自分だったら絶対に気付かないだろうな…。

潮風が渡る。一面の松林である。見渡す限りの松である。

狩野川の河口から田子ノ浦まで延々と続く、所謂千本松原ーー東海の名勝として名高い青松の砂丘である。

伐り倒された松林を元通りにしたのは、比叡山延暦寺の、何とか云う偉い上人の弟の、長円と云う僧なのだと云うことである。その僧は、伝わるところに依れば、偶偶この地を通り掛かり、塩害に泣く村人を救おうと大願を立てて、一本一本松苗を植えたのだと云う。通り掛かっただけなのにーー。

そして次は「おとろし」の章で織作茜が一族に伝わる神像を奉納しに訪れた下田へ。この日は真夏日で既に蒸し暑く、日が完全に昇りきる前に、と早朝から伊豆急下田駅から徒歩数分の下田富士へと向かう。

下田にーーペリーが来た下田港のある下田です。そこに下田富士と呼ばれる小さな、丘のような山があるんです。これが、矢張り駿河富士の『姉』なんだそうです

確かに遠くから一定の角度で見ると富士山のよう(あまり比べるのはよくないらしいが)。作中では「小さい」とあるが、見ても分かる通りかなり急峻。往復20分程度で済む行程ではあったけれど、降りてくる頃には汗をダラダラとかいてしまった。

参道入口脇には本作でも詳しく紹介されている富士の姉妹の逸話を説明した看板が。

下田富士こと石長姫の容姿が醜かったことが、物語の発端となるのです

参道入口付近は顕かに直線的な階段だった。しかしこのまま登り続けたら、頂上に着く前に階段は人工物としての主張さえやめてしまうかもしれぬ。そうなるとただの凸凹した坂である。

朝も早かったためか道中は誰ともすれ違わず。途中スズメバチのような巨大な蜂に追われ、半ば駆けながら頂上へ。

簡単な鳥居だった。細やかな頂上である。

そこは半端な広さを持った山の頂上だった。社はーー確かにある。トタンで補修された小さな社だった。流石に参道の脇にあった祠よりは大きかったが、決して立派なものではない。木肌は日に灼け、塗料は剥げ、錆が浮いている。奉納の二文字と梅の紋。黄ばんだ幕が、風ではたはたと揺れていた。

眺望は特になし。頂上でもなぜか異様に蜂が多く、身の危険を感じたので着いて早々に下山。余談だが途中、香水をつけた女性の気配を感じることがあり、気のせいかと思いつつ織作茜のことを思い出さずにはいられなかった。好きなネロリの香りだったのだけど、後々調べた所、この香料はダイダイやビターオレンジと呼ばれる柑橘類の花から採取されるもので、ダイダイの日本の主産地は伊豆半島。花期は5月〜6月ということなので、気がつかなかっただけで実際に花が咲いていたのかもしれない。*8

夜は例の事件が発生する蓮台寺温泉へ。部外者が進入できそうな露天風呂がありそうな宿は、周囲ではここ伊豆下田蓮台寺温泉 清流荘しかなかった。そんな理由で選ぶのもなんとも失礼だが、とにかく広く、何種もある大露天風呂をまさかの独り占め。夕食も美味しく、大変素晴らしい旅館だった。是非また行きたい。

その昔、津村の母が勤めていたと云う蓮台寺温泉の宿である。

そして物語はいよいよクライマックスを迎え、舞台は韮山へ。「戸人村」は一体どこなのか?作中では、「場所は伊豆の韮山から道なき道を分け入った山の中である」「韮山と原木の真ン中辺りに、山に登る道がついてますね?」「その道を行く。毘沙門山を通り越した辺りから道なき道を北上するのですね。ずっと。その辺りなんです」とあるので、「いちご街道」の愛称で知られる道を進み、山奥に入ってから北上した辺りかと推察。

実際に韮山駅を降り、ひたすら田畑に囲まれる道を歩き続けてようやく現地に辿り着くと、山の麓からは富士見パークウェイ(物語の舞台設定以降である昭和41年に開通*9)となり、かなり交通量が多く危ないのでこの道を登ることは断念。

戸人村へと至る道の入口は塞がれていた。そこにはトラック三台と土嚢や我楽多で築かれた鹿砦が築かれていた。

仕方がないので毘沙門山を挟んでもう一本北の道に寄ることに。「山中って言っても奈古谷の方ならね、温泉も湧いてますし、国清寺と云う名刹もありますから。文覚上人配流の地とか云うお堂もあります」と駐在の淵脇が言っていた通り、毘沙門堂に至るまでの道中には文覚上人流寓之跡を示す祠や石碑、「奈古谷七つ石」と呼ばれる七種の奇岩があったりと、なかなか見所に富んでいて面白かった。

高低差は激しく、岩があるかと思えばぬかるんでいる。一団は無言で進んだ。

山中は意外にも鬱蒼としていて、日中でもどこか薄暗い。整備された車道を歩くだけなので楽かと思いきや、意外にも勾配が急で、汗がとめどなく流れる。これよりも険しい道を夜中に、懐中電灯や篝火を頼りに一行が登ったとは俄かには信じ難い…。周囲の名所を見終え、午後4時を回った頃にはかなり暗くなってしまったので、急いで下山しました。

本作ではずっと喧騒に包まれていた韮山。実際には農作業に勤しむ方がポツポツといるだけのとても長閑な所でした。どこまでも広がる青い空に、泰然と構えた富士山。好天に恵まれた2日間の最後を飾るに相応しい光景を目に焼きつけ、伊豆の地を後にしました。

ちなみに、『塗仏の宴』を終えた所で『百鬼夜行 陰』に残る最後の短編、「火間虫入道」を読めば、とある登場人物の没落ぶりが窺えます。

今昔続百鬼 雲」京極夏彦

また、ここで『塗仏の宴』で中禅寺に負けず劣らずの妖怪談義を繰り広げる多々良勝五郎が登場する中編集、『今昔続百鬼 雲』、副題「多々良先生行状記」を読んでおくこともオススメ。時系列的には「百鬼夜行シリーズ」以前の話となるも、シリーズ次作の『陰摩羅鬼の瑕』の関係者が登場するので、良い事前知識となるはず。

百器徒然袋 雨」京極夏彦

そしてそして、榎木津礼二郎の快刀乱麻を断つ活躍を描いた番外編、『百器徒然袋 雨』に収録されている中編「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」が時系列的には『塗仏の宴』と『陰摩羅鬼の瑕』の間に発生しているので、次作に入る前に読んだ方が楽しめるかもしれない。

陰摩羅鬼の瑕」京極夏彦

いよいよシリーズ7作目、『姑獲鳥の夏』からちょうど一年が経った昭和28年の7月。花嫁が結婚初夜に殺害される事件が過去4度も発生した、白樺湖付近に建つ「鳥のお城」と呼ばれる洋館。その主人である由良伯爵から、次なる被害者を出さないためにも新婦の護衛を依頼された榎木津と、付き添いの関口が訪れるがー。

信州の方の最近出来た湖、白樺湖かな。その水辺に棲んでいるのだそうだ

作品内の天気とは違い、小雨がちな週末に白樺湖畔で一泊。「館があるのは、池の平って草っ原の外れ」らしいが、そちらの方はファミリー層向けの施設が多く、あまり静謐な雰囲気もなかったので、湖畔沿いにあった、風見鶏がなんだかそれっぽい別の建物の写真を撮影してみた。

鳥のーー。鳥の城だ。見えましたと楢木が云った。「由良邸です」

本作は殆ど鳥の館の中で物語が完結するので、聖地巡礼は以上。せっかくなので近くの蓼科山や霧ヶ峰に登って帰りました。

後巷説百物語」京極夏彦

そしてここでようやく読めるのが、京極夏彦氏の別シリーズ「巷説百物語シリーズ」の3作目に当たる『後巷説百物語』。勿論最初の2作を読んだ上で臨むべきだが、実はこの作品は「百鬼夜行シリーズ」とも密接に関わっているので必読。まず、短編「五位の光」が『狂骨の夢』で登場する神主集団と『陰摩羅鬼の瑕』の由良家の来歴を詳らかにしている。また、最後の短編「風の神」でも由良家に加えて、なんと『鉄鼠の檻』で言及されていた人物が登場する。

そしてこれらの作品を読んだ後に、『百鬼夜行 陽』収録の「青行燈」を読むと様々な点と点が繋がり面白い。同作に含まれている「大首」も、次作の重要な布石となる。

最後に、『百器徒然袋 雨』の「瓶長 薔薇十字探偵の鬱憤」が時系列には『陰摩羅鬼の瑕』後のタイミングで発生するのでここで読んでおきたい。

邪魅の雫」京極夏彦

そしてついに!シリーズ8作目、2022年現在、出版されているなかではシリーズ最新作へ。晩夏の8月下旬から9月にかけて、平塚・大磯で発生する連続毒殺事件の現場を辿ってみました。

まずは、まさかないだろうと思いつつも、ダメ元で検索してみたら意外にも存在していた平塚の乗馬倶楽部へ。本作では被害者の一人が通い、益田龍一が関係者への聞き取りのため訪れた(そして以降番外編で何度も登場する乗馬用の鞭を購入した)とされる場所。勿論、実際の場所は物語とは無関係という点に留意しつつ(そして公共の場ではないので写真は控えます)、一度乗馬クラブがどのようなものか見てみたかったので、寄ってみることに。意外にも開けた田畑の中にあり、脇を歩いたとしても死ぬ程目立つ。ただの不審者にしか見えない…。艶々の栗毛の馬が女性騎手と共に元気そうに馬場内を駆け回っており、物語との符号に嬉しくなりつつも、あまり長く滞在するといよいよ通報されそうなので早々に退散。その足で大磯海岸に向かいました。

なら知らないかね?あの、大磯だかの海岸で女学生の死体が見つかったと云う事件

本作では、大磯の旧吉田茂邸近く(西田新造のアトリエ)から、平塚の花水川河口付近(大鷹篤志の待ち合わせ場所)まで、かなり広範囲の海岸が言及されているのだけれど、今回は大鷹と同じように、中間にある大磯駅から「何の迷いもなくほぼ真っ直ぐ海岸に向かった」。そこは週末の大磯海水浴場ということもあり、予想以上の混み具合。アトリエから見える陰鬱な景色とは程遠いし、ましてや女学生の死体が転がっていそうにもない。あまりの雰囲気の無さにちょっと場所を間違えたかもな、と後ろ髪を引かれながらも、次の予定があったためその場を後にしました。

これで現在刊行されている「百鬼夜行シリーズ」本編の全てを読み終え、聖地に訪れたことに。ただ、まだまだ物語は続く中でせっかくなので、引き続きサイドストーリーやスピンオフ作品を紹介。完全な時系列という訳ではないけれど 「ああ、この登場人物はこことここで繋がるのか」、とネタバレがない範囲で理解できる順序になっているはず(間違っていたら教えてください)。

まずは、複雑怪奇極まる一連の毒殺事件が解決された後は、関係者達の視点に寄った『百鬼夜行 陽』収録の「鬼童」と「雨女」が読めます。

ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔」京極夏彦

そしてここまでできるだけ我慢してから読んで欲しいのが「ルー=ガルーシリーズ」の2作目である本作。なんと、『邪魅の雫』に登場するキーアイテムが密接に関わってくる。あの人物の名前も…?前作以上に「百鬼夜行シリーズ」とのオーバーラップを楽しめるようになっているので、是非『邪魅の雫』を読んでからチャレンジして欲しい。

時を戻し、『邪魅の雫』と同時期の昭和28年、初秋へ。恐らく題名だけ発表されている次作、『鵼の碑』に関わる物語であろう「墓の火」(『百鬼夜行 陽』収録)を読むことができる。めちゃくちゃ続きが気になる…!そして、連続毒殺事件直後の9月、榎木津探偵がペットのヤマアラシの捜索をきっかけに出くわす重大事件の顛末が「山颪 薔薇十字探偵の憤慨」(『百器徒然袋 雨』)で描かれている。

百器徒然袋 風」京極夏彦

榎木津の奇態、もとい大活躍は数を重ね2作目の『百器徒然袋 風』が刊行される程までに。ヤマアラシの一件後の11月、今度は招き猫にまつわる珍事が「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」で発生する。『絡新婦の理』では家政婦だった奈美木セツや、『今昔続百鬼 雲』で多々良先生の相棒?を務めた沼上蓮次などの懐かしい面々が登場するのが嬉しい。

この中編で再度仕事を失ったセツの次の職場は、11月半ばの日光を舞台にした「蛇帯」(『百鬼夜行 陽』収録)で明らかに。こちらも『鵼の碑』の前日譚なのだろうか…?栃木に行くのが楽しみだ。ついでに榎木津の過去を描いた短編、「目競」を読むと『百鬼夜行 陽』収録作品を全て読み終えることになる。

そして物語は12月に入り、「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」で二つの事件が立て続けに発生。その黒幕が、本編のあの人物だったりする所がニクイ。また、「面霊気」では、ついに榎木津の父親が登場する!イメージ通りで笑った。

今昔百鬼拾遺 月」京極夏彦

なんとも名残惜しいが、「百鬼夜行シリーズ」の作品は2022年末の現時点ではこの『今昔百鬼拾遺 月』で最後。中禅寺敦子と『絡新婦の理』の美由紀の意外なコンビがバディを組んだ妖怪探偵物。「鬼」(昭和29年3月の物語、同時期に京極堂一味は栃木の事件に巻き込まれている)「河童」(同8月、東北でも別の事件が発生)「天狗」(同10月、榎木津が富士山だか河口湖だかに出掛けているらしい)と中編が続く中で、合羽橋のかっぱ寺(曹源寺)や高尾山など、東京在住であれば比較的アクセスし易い舞台が登場するので、折を見て足を運んでみようか、と思ってみたり。

書楼弔堂 破暁」京極夏彦

「百鬼夜行シリーズ」が昭和、「巷説百物語シリーズ」が主に江戸時代、「ルー=ガルーシリーズ」が未来を舞台に同じ世界観を共有しているとすれば、「書楼弔堂シリーズ」は明治を中心に展開する新シリーズ。「百鬼夜行シリーズ」の主役と関わりがある人物が登場するとのことで、読むのが楽しみだ(実は勿体なくてまだこのシリーズには手を付けていない)。

最後に

ここまで読んだ方はもうお気付きだろう、「百鬼夜行シリーズ」の事件は殆ど湯治場や避暑地、景勝地で起きていることを…!!おかげで聖地巡礼者としては、四季の変化を肌で感じながら、ついでに名所巡りまでできる、素晴らしく充実した一年半を過ごすことができました。興味が湧いた方は是非チャレンジしてみてください。

最後に、デザインを一新したシリーズの背表紙を並べて一枚。美しくも不穏なデザインがとても内容に合っていて好き。いつか新作が出版され、日光、東北、富士山周辺にも行くことがあったら、この記事を更新したいと思う。